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▼次世代につなぐ点から線へ、線から面へのまちづくり 
 
  谷 一之さん
  NPO法人しもかわ観光協会会長/(株)谷組代表取締役 [下川町]


 
下川町の冬の夜を幻想的に彩る「アイスキャンドルフェスティバル」。
ろうそくの炎が氷のカンテラのなかで揺らめいて、神秘的な世界を現出させる。
今でこそ目にする機会も多いアイスキャンドルだが、そもそも、これは1981年に下川町のまちづくりグループが発案したもの。

1988年2月。第14回を迎えた「しもかわ冬祭り」は「アイスキャンドルフェスティバル」として、リニューアルスタートする。
このイベントをプロデュースしたのが、当時、冬祭りの企画部長で商工会の青年部長だった谷一之さんだ。

内輪のお祭りを町外のひとたちとの交流の場にしたい−谷さんは次々と新企画を打ち出していく。

1997年からは町内の万里長城メモリアル広場において500個のアイスキャンドルと白樺のライトアップによる「アイスキャンドルパーク」がスタート。それまで土日で開催されていたイベントを9日間に延長した。万里長城を含む桜ヶ丘公園一帯は、町から外れた高台にあるため、町の街灯などの光の影響を受けない。

資源と機会を最大限に活用するための工夫と努力は惜しまない。

「でもね、案の定『冗談じゃない、2日でも大変なのに』とみんなに反発された。そりゃそうで、みんなそれぞれに仕事をもっているわけだから。でも全部自分でやるわけでなく、交代でローテーション組めばいいわけだからって説得して。いや、しぶしぶだったよ(笑)」

点から線へ、線から面へとアイスキャンドルのともし火の光は町全体に広がっていく。
期間中は、それぞれの会場のほか、町民が思い思いに作ったキャンドルが町中に飾られ、町全体がやさしい色に包まれる。

2003年からは、かつて営林署として使われていた「恵林館」を舞台として、手作りろうそく体験コーナーや音楽コンサートなど女性主体によるイベントが実施され「アイスキャンドルスクエア」として賑わいを見せる。

面的な広がりと、個人個人の想いが現在「アイスキャンドルミュージアム」として結晶し、イベントをさらなる進化を遂げている。

そして驚くべきは、このアイスキャンドルを売り物にしてしまうところ。

「やっぱりこれはイベントだけではもったいない、ぜひ販売していこうと。平成元年からは商工会青年部が中心になって『アイスキャンドル友の会』をつくって、役場やキャンドルを発案したまちづくりグループや郵便局とで検討してね。まあ、数は出なくともさ。下川町はこんなことをしているんだよ、ってメッセージを送ることはできるだろうと思ってね」

アイスキャンドル、つまり氷のランプシェードをあらかじめつくり、発砲容器に収めて、ろうそくとセットにして3,800円(当時の価格)。全国ドコでも届けることができる仕組みをつくったのだ。

メッセージ代わりになればいい、そんなささやかな想いであったが、これが思わぬ反響を呼ぶ。販売を開始してまもなくのこと、このギフトセットが某ビール会社の目に留まり、キャンペーン用として買いたいと、1万個もの注文が舞い込んだのだ。

「でっかいクリスマスプレゼントだったなあ(笑)。納品に1ヵ月半くらいかかったけどね」
と当時、友の会会長でもあった谷さんは振り返る。


▲万里長城を彩るアイスキャンドル(上)、やさしい光でライトアップされたアイスキャンドルスクエア(下)

▲谷さんは、北・北海道の広域の地域連携を図るための団体「北の星座共和国」建国推進事務局事務長なども務めており、その人脈は幅広い

▲カルチャーウィークエンドの一環で公開されたオープンガーデン。個人のお庭とは思えないほど美しく、手入れが行き届いている


下川町の仕掛けは他にも多々ある。

例えば、谷さんが運営委員長を務めている地域学「しもかわ学会」。
しもかわ学会とは、下川のことを地元の人が主体となって学ぶ場で2003年に発足、これまで地域にまつわる勉強会を重ねている。

その事業の一環として、これまで10巻のブックレットを発行している。
1冊目は「万里長城」、2冊目は「しもかわの『森』」、3冊目は「スキージャンプ」、4冊目は「しもかわの『食』」…。

町が誇れるものとして何が思い浮かぶか、その上位10位をみんなで決めて、それぞれのテーマについて調べ、本として残すという企画だ。何十冊になるかわからないが、これが完結すれば下川百科辞典の完成である。
冊子には編集に携わった町の人の名前が入っており、文章を通じてその想いがダイレクトに伝わってくる。

また、昨年からは、札幌圏で開催されている夏の夜のワークショップイベント「カルチャーナイト」をアレンジした「カルチャーウィークエンド」が実施されている。公共施設等を一般開放して、市民が様々な文化活動を行うイベントで、今年は7月22日と23日の2日にわたって開催された。

そのプログラム数はなんと「22」。

町の方のお庭を一般開放する「しもかわオープンガーデン」は、NPOしもかわ観光協会が主催、美味しい食事をアロマテラピーでリラックスして味わおうという「道産小麦のパン・自家製チーズのお食事と癒し空間体験」は、食彩工房・美花夢が主催する。また「手延べ麺づくりの見学」や「町長室一日開放」、カラオケ歌い放題の「こどもスナック」など、どれも気軽に、また老若男女の別なく楽しめる内容になっている。

「それだけの人がいて、素材があって、それを共有できるってのがいいと思うなあ」

そう話す谷さんは、主催団体のひとつNPOしもかわ観光協会の会長でもある。
アイスキャンドル友の会前会長、しもかわ学会運営委員長、しもかわ観光協会会長、さらには下川町議会の副議長と、役職は他にもまだまだあり、実に多忙な日々を過ごしている。

それにしても、人口4千人の町で、なぜこれだけのことができるだろうか。

「他所の町にできないことをこの人口規模でやってくのは、やっぱり大変なこと。そのためには目を外側に向けて、内側とのバランスを上手につくっていくこと。内側ばっかりだとどうしても愚痴が多くなってしまう。まちのなかの話題といったら、人口は減る、高齢化は高まる、子どもは生まれない、町の財源は厳しくなる…。どうしたって明るい話題が少ないよね。だから外に目を向けて、意識してそのバランスをとることが必要だね」

下川は新しいことにチャンレジしようという気風が強い。

真っ赤に熟れた鈴なりのトマト。
今が収穫シーズン真っ盛りだ。国道沿いに並ぶビニルハウス6棟が今年から本格的に稼動をはじめた。トマトをつくっているのは農家、ではなく地元の建設業者、谷組である。
実は、谷さんはその代表取締役社長を務めている。


第162回国会に提出されていた「農業経営基盤強化促進法等の一部を改正する法律案」は、昨年6月3日に国会を通過、9月1日から施行されている。
これにより、それまで構造改革特区に限定されていた企業が農業へ参入するための要件が全国的に緩和され、下川町では谷組を含む3社が名乗りを挙げて、北海道第一号として参入する。

地方は、そもそも第一次産業こそが基幹産業である。
ところが、1950年代から中央と地方との格差是正を図るため、各種地域振興法が成立。税収の少ない地方においても補助率の嵩上げ等の優遇措置により、隅々まで舗装道路が敷かれ、港湾が築かれ、河川は護岸された。公共事業費が右肩上がりに増加し、次第に人々はクワをツルハシに持ち替える。

ところが現在、ほぼ全国のインフラは着実に整備され、公共事業は頭打ち。
そこで今、このインフラを活用した21世紀型の一次産業に取り組もうと、建設事業者が次々農業に参入しているのだ。

現在、谷組では4町歩を町から借り受け、地元の農家の方の指導を仰ぎ、トマトとトウモロコシの栽培を行っている。

「今年は最初の第一歩。ただこの農業にしても、まちづくりにしても、自分は下川の次の世代にいろんなチャンスをつくってやりたいなって思っている。人と人をうまく繋いでいくこと、次にある芽をうまく引き出していくこと、それを地域の中に反映させていくこと、そしてそれを地域の外に発信していけるようにね」

外に開かれた感性。それを受け入れてくれる人々。
何かにチャレンジしたいなら、そんな下川町がおススメだ。


(2006年8月記)




▲下川町のネットショップ「のーすもーる」では、アイスキャンドル、もみの木グッズ、トマトジュースなど下川町の特産品が購入できます!


▲収穫されたトマト、トマト・・・。一つずつ大きさを確認し、ケースに収めていく









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