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▼オーロラが降り、星が空を埋め尽くすまち [陸別町]
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「これ、この写真からすべてがはじまったんだ」
役場の野下純一さんが銀河の森天文台に掲げられた一枚の写真に向かってつぶやいた。
「この写真を撮った津田浩之君は役場の職員。帯広畜産大学を出てたから、最初、役場の畜産担当として配属された。ところが星が好きでね。仕事をする牧場が、町はずれの山の上にあるもんだから、夜は星がすごくて。それで星好きの人が集まってきて、同好会をつくってさ。さらに町の大工さんなんかが手伝って自前の観測所までつくったんだね」
毎晩のように観測所に通い星を眺めていたという津田さん。
その出来事が起きたのは1989年10月21日のことだった。
「同好会のメンバーはその観測所から帰ったんだけど、たまたま津田君と副島俊樹君が残ってた。そしたらこの赤いオーロラが見えた。肉眼でオーロラがはっきり見えることは滅多にない。多分、このときと、そのあともう一回くらいじゃないかな。このときは空が赤く染まって、山火事じゃないかと消防に連絡が入ったくらい。本州の方でも見えたらしい。それをカラー写真で津田君が撮った。それがTV番組『ニュースステーション』で取り上げられて、それを見た名古屋大学の上出洋介(かみでようすけ)先生から電話入って-」
この瞬間から陸別は「オーロラの町」として一躍全国に名が知られるようになる。
オーロラは太陽面の爆発で放出された帯電微粒子が、電離層中の空気の原子・分子に衝突して白・赤・緑など発光する現象で、通常、北極や南極など高緯度の上空110km前後に現れる。
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| ▲町を変えたオーロラの写真を前に右から野下純一さん、村田拓也さん、榊原芳恵さん |
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| ▲天文台の裏手には、日本最大のキツツキ、クマゲラの痕跡が |
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陸別町は、環境庁から1987年度に「星空の街」に選定されており、以前から星がきれいに見えることは、一部の人には知られていた。
「林間学校のボランティア作業を終えた夕暮れに、ふと空を見上げると人工衛星が上空を通過するのが見えた。これなら暗い牧場へ行ったらもっと見えるんじゃないか、ってことになってみんなで車に乗り込んで上陸別の公共草地に行ってみた。舗装道路にマット広げて男だけで寝っ転がったら、それはすごい星。ほんとうにすごい数の星が見えたんだ。そしたら次の夜、言い合わせた訳じゃないのに、みんなカアちゃん連れて集まってきたんだわ。なんだお前らもか、って」
「それまでは『星、見る?』星以外に見るものないのか、お前性格暗いなあ、くらいにしか思ってなかった。でもそれがきっかけでさ。星っていったらこれは違う、こんなにすごいものなんだって。だから天文台つくるって話になった時は、真っ先に『ああそれはいい、絶対つくった方がいい』って言ったよ。あの天の川なんか見事だよ。本当に」(浜田始さん)
オーロラと星で町おこしをと、1995年に天文台建設の計画が持ち上がり、その年7月に野下さんは天文台建設の担当者として任命される。
「全然星には興味なかったんだけど・・・」という野下さんだが、建設に当たって全国の天文台を精力的に見て回り、東大の清水実先生に教えを乞い、また設置する望遠鏡についてもどのメーカーのものが陸別に適切なのか研究を行う。
野下さんは当時、国産のもっとも評判がよいメーカーに目をつけ、99%そのメーカーからの望遠鏡の導入を決めていたという。
「そんなある日、役場に出勤したらオーロラを撮影した津田君が『いやコントラバス社が…』って言うわけ」
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最終的にどのメーカーにするか決めるため、メーカー5社を呼んで1時間ずつプレゼンテーションをしてもらうが、結局、当時円高でアメリカ製コントラバス社のものが最安値になること、そして津田さんの一言がコントラバス社を選択させる。
「この望遠鏡の特徴はいつも同じ高さで見られること。普通、望遠鏡は鏡とのぞく口が一直線になっているので、望遠鏡を向ける高さによって、のぞき口も上下する。だけどこれは常に一定なんです。だから子どもさんや車椅子の方も楽に見ることができるんですよ」
陸別町産業振興課銀河の森振興主任の村田拓也さんはそう語る。
全国を奔走した野下さんの甲斐あって、1997年、直径115cmという一般公開型としては日本最大級の反射式望遠鏡を頂いた銀河の森天文台は供用を開始。反射式望遠鏡には「りくり」と愛称がつけられた。
見たい星をコンピューターに入力すると「りくり」はターゲットを自動追跡、台座がグルリと回って空に向かい立ち上がる。そのスピードは驚くほどすばやく、意外にもスムーズ。
天文台はほかにも30cmクラスの望遠鏡3基等を備えている。
「『りくり』と比較すると小さいですが、それでも直径30cmあります。30cmで見るのもきれいです。焦点距離が違うので視野が広く、写真を撮ったりするのには便利です。同じ望遠鏡といってもやっぱり見え味というか、感じ方が違うんですよ。同じ倍率で見ても」
そう教えてくれた村田さんは陸別町に来て5年目の星の専門家。理学博士であり、時に一般の人向けの星空観望会講座なども行っている。
天文台は町営だが、名古屋大学と国立研究所の施設が併設されており、ここを拠点に全国の関連大学、研究機関とのネットワークが結ばれている。当初、「陸別総合観測室」だった名古屋大学太陽地球環境研究所は2003年4月に「陸別観測所」に昇格。関連の学術大会も頻繁に開催され、もっとも星に近い場所としてその地位を不動のものにしている。
天文台が供用を開始したその年、陸別町は「星空にやさしい街10選」に選ばれる。
「内緒だけど、天文台の台座には清水先生や当時関わった人がみんなで名前を書き込んだんだ。私も含めて、記念にね」(野下さん)
星の数ほどのたくさんの人の夢と想いが詰まった銀河の森天文台。
一度足を運んでみてはいかがだろう。
(2006年6月記)

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| ▲小高い丘の上にある銀河の森天文台。日中でも星が見られることがあるので、スタッフの方に一声かけてみよう |

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■銀河の森天文台(りくべつ宇宙地球科学館)
| 住所 |
北海道足寄郡陸別町宇遠別 |
| 電話 |
(0156)27-8100 |
| FAX |
(0156)27-8102 |
| 公式サイト |
http://www.rikubetsu.jp/tenmon/
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| 営業時間 |
4~9月:14:00~22:30
10~3月:13:00~21:30 |
| 料金 |
大人:300円(昼間)500円(夜間)
子供:200円(昼間)300円(夜間)
※昼間:4~9月は18:00まで。
10~3月は17:00まで。 |
| 定休日 |
月・火・年末年始・5月第3週月曜~第4週金曜まで |
▼陸別町役場公式サイトはコチラ

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